7月2日

〜昨日見た夢シリーズ第三弾〜



まず、蟹を想像してもらいたい。ズワイのように頭のとがった丸型ではなく、磯でちろちろしているような頭が平らな逆台形の小さな蟹に形は近い。しかしその甲羅はずんぐりと大きく、台形の対角線はおおよそ20センチはある。そして茹で上げたように赤い。

甲羅からは足が八本生えている。これも蟹と同じである。ただし甲羅の割には随分と短く、そしてやはり赤い。

さて、頭の部分である。甲羅から突然にょきっとイグアナの首のようなものが野太く突き出し、鎌首をもたげている。首の付け根からは、これまた太い亀の前肢のようなものが二本生えている。ただしこれは体を支える足ではなく、むしろ手として使われるようだ。

奇妙な小動物。名前は特にない。名前はないが、近頃はやりのペットである。不便なのでソレと呼ぼう。

初めて僕がソレを見たのは、親戚の家だった。ソレは、テーブルの端から端までヨチヨチと歩き、際まで来てもそのまま進もうとして、コテンと床に落ちるのだ。それからムクリと起き上がり、器用にテーブルの脚を辿って上に戻る。そして再び端まで歩いてコテン。何が楽しいのか、延々とそんなことを繰り返していた。顔は爬虫類の無表情だし、鳴き声を立てることもない、体の動きは全体に機械的だが、不思議な柔らかさがあった。

「可愛いでしょ」

といわれても、あまり素直に同意はし難い。はっきり言って見た目はグロテスクだ。ただ、アンバランスな作りはグロさをそこそこ打ち消しているし、目の前で行われている小さな子供のような反復行動にも愛嬌はある。

「うん、そうねぇ」

僕は曖昧に答えた。

「それにこの子には変わった力があるのよ」

「へえ、どんな?」

「そのうち分かるわよ」


それからしばらくして、街で不思議な噂を聞くようになった。なんでも、ソレを飼っていれば、何があっても大丈夫と言うのだ。例えば、ある男は事故で右足を失った。しかし大丈夫、なにも心配は要らない。なぜなら彼はソレを飼っていたから。失われた右足の切断面、そこへソレはがっちりとしがみつき、見る間に形態を変えていったという。ものの数分のうちに、彼は右足を取り戻していた。右足に姿を変えたソレはしっかりと人体に融合し、まったく健康な足としての機能を果たすようになったのだ。その後どんなに調べてみても、彼の右足が本来は人間の足ではないことを示すことは出来なかったという。

ソレには、何か目立った壊れ物があると、自分からよっていってそこにしがみつき、壊れる前の姿に自らを変形させる習性があった。有機物であっても無機物であっても変わりはない。ソレは何にだってなれた。そして、一度変態すると二度と元には戻れないようだった。


あるとき、ばったり友人に会った。ここのところ見かけていなかったので、どうしていたのか聞いてみると、驚いたことに入院していたという。

「もう大丈夫なのか? どこが悪かったの?」

「ああ、もうすっかりよくなったけど、頭がね。頭の中に腫瘍が出来てたんだ。それが結構進んでて」

「ちょ、ちょっと、それって深刻すぎないか。手術で摘出に成功したってこと? 大変だったんだな」

「いや、手術はしてないよ」

彼はにんまりと笑った。

「え、じゃあ……」

「実を言うと、医者には見放されたんだ。幸い告知してもらってたから、間に合った」

僕は黙って彼の言葉を待った。背筋を寒いものが登っていった。

「簡単な話さ。俺はソレを飼ってた。人に頼んで首を刎ねてもらって、そこにソレが取り付くようにしたんだ。どうだい、飼い主の顔だから良く覚えてたし、寸分違わないだろう?」

僕は黙って彼を見つめた。彼は相変わらずニコニコしていた。以前と何も違わない友人の姿がそこにはあった。しかし。

しかし、君は、誰だ――?






7月4日

白黒反転系の騙し絵。どちらを背景と捕らえるかで絵柄が変わってくるタイプ、有名なのはルビンの壷とか呼ばれる奴です。




まあ世の中にはいろんな騙し絵がありますが、僕にとって史上最大の騙し絵はこちら。



人に教え諭されるまで数年間、ずっと口だと思ってました。バットマンの口。

ちょっと歪んだのどちんこ、前歯を割ってあふれ出す怒涛の唾液。さすがバットマンともなるとダイナミックだ、しかし良くこんなロゴマーク作ったな。

反転させて見たときの衝撃と言ったら。






7月4日 その2





なんか町がえらいことになってます。

独立記念日? なにそれ。






7月4日 その3

そろそろ爆竹の音も収まったかな……? 

パン! パパパパン! きええええっほほーい!!

――だめだこりゃ。(もう夜中です)

決勝トーナメント進出だけでも初の快挙だった我らがギリシャ、準決勝でチェコを破ったときはギリシャ系のお店の全てが国旗を掲げたもので、学校から帰って電車を降りた瞬間に「お、勝ったか」と瞭然な有様でした。そして今日の決勝。

ちなみに前日にTMB氏とチャットしてたんですが、この御仁がとんでもないことを口走りました。

「あ、ギリシャの応援してるの?」

何? こちとら地元ですよ地元。なんでわざわざポルトガル。ポルトガルに対する興味なんてイザベラ女王が死んだときに潰えてるんですよ。

は? フィーゴ? 誰それ。ふいごなら知ってるぞ、吹いて欲しいか?


なんだっけ。そう、優勝優勝。ヨーロッパ王者。

あちこちのスポーツバーから雄叫びを上げながら駆け出してくるギリシャ移民。

車に大量の国旗を担がせて、クラクションを鳴らしつつ町をねり走る個人パレード部隊。

国旗をマントにして羽ばたこうとするおじさん。(多分3人くらいホントに飛んだ)

道頓堀がないのが残念だ。

と思ったら、イーストリバーで花火大会があるって。ギリシャ優勝を祝ってmacy'sが花火大会開催してくれるって。なんとこれは行かねば。

え、それは独立記念日の花火じゃないかって? 何言ってるんですか、独立記念日なんて228回もやってるんですよもう飽きただろ。

9時近くにイーストリバーのクイーンズ側の岸辺まで繰り出しましたよ。

一人で。

いや、一人で行くつもりはなかったんですが、恵実さんにふられたから一人で。ふざけんなあのアマ。

Chuju「花火いこ、花火ー」

恵実「あー、ごめん。論文の締め切りが近いからパス」

「お祭りだよ! ギリシャが勝ったんだよ!」

「は?」

「いや、サッカーで」

「ああ、騒がしいと思ったらそれか

正に縁なき衆生は度し難しってやつだな。はん? なんだって、イリアスがどうした僕に話しかけんなこの文学オタクが。

「それにギリシャ関係ないし」

けっ、新参者め。(恵実さんはアストリアに引っ越してきたばかりです)

「で、ゲームは面白かった?」

「いやそれがな、あれ、ケーブル入ってないと見れないから、スポーツカフェに行こうと思ってたんよ。でな、昨日ずっとラジオ聞いてたんよ。インターネットで日本のラジオ聴けるんよ。それで24時間連続生放送ってのがあってな。ほとんど聴いてたからぜんぜん寝てなかったんよ。そんでな、寝るやん。やっぱ寝たいやん。起きるの遅くなるやん。そんで試合見てない

「……バカ?」

バ……!




……カかもしれない……。

「楽しんできてね、花火」

……はい。




た〜まや〜。






7月8日


 















7月9日

ところでみなさま、念力ブログというサイトをご存知でしょうか。(しばらく前からリンクは張ってありましたが)

見れば分かりますが、念力を用いてキーボードを叩こうという試みです。これまでの成果としては、4月29日(二十九日目)の

げうい;hrs


という書き込みが唯一です。なんか、ディスプレイの上にあった小物入れがキーボードの上に落下してきたんだそうです。僕もこの事件の後でサイトの存在を知ったんですが、いかに「げうい;hrs」事件が人々の熱狂をあおったかはこの辺を見れば分かります。アホがたくさんいます。(←無限の愛情がこもってます)

それから念力パワーなんてのもあります。コンセプトはまったく同じで、にわかにネット界は念力合戦の様相を呈してきました。どちらが先に偉業を達成するのか。競争は時に驚くべき成果をもたらしますから、ライバルの出現は実に喜ばしいことです。

ただ、念力パワーの方はここのところ更新が止まっています。ひょっとすると我に返った念力が炸裂してPCを破壊してしまったのかもしれません。

いずれにせよ、目の離せない念力。たぶん癒し系です。






7月12日

らんらんが人見知りするようになってきたようです。

知恵がついてきたということなんでしょうか。乙女の恥じらいなんでしょうか。ひょっとすると、今までは誰でもみんな同じだったのかもしれませんね。そういう意味で、知らない人なんていなかったんじゃないでしょうか。自分と親と他人の区別がついてきたということで、また一つ大人への階段を登ったんだな、という感じです。というか、人間への階段か。

つかまり立ちをするようになり、はいはいで動き回るようになり、一日千秋の勢いで成長していくらんらん(←言葉の使い方が一部間違っています)。その過程を近くで見れないのはとても残念なことです。ああ、らんらんに会いたい。今度帰ったらべたべたしちゃうぞ。義兄上様に殴られるまではやめないぞ。


人見知りするのか。


きっと泣かれるんだろうな。僕のことを覚えているわけないもんな。覚えていたとしたらエスパー教育として念を送り込んでたこととかばれるし、それはそれでまずいんだけどな。まあ、出たのはα波だけだったけど。赤ん坊って多分最初からα波出てるんだよな。あとマイナスイオンとか。

それはそれとして。

僕なんて、らんらんから見たらきっと恐いおじさんなんだろうな。捕食獣発見とかそんな感じで、仲間に警告音を発したりされるかもしれない。鋭くピィーッてのどを鳴らして、近所中の鳥がばさばさと飛び去っていくんだ。

ああ、そんな失意の時に僕は耐えられるだろうか。無理だ無理だ、そんなことならもう会わずにきっぱり忘れてしまった方が幸せじゃないか?

でも、でもひょっとすると、受け入れてもらえるかもしれない。そうだ、そうなったらなんてすばらしいんだろう! ああ、世界はこんなにも輝いていたんだね。

でも、でも、そんなことありえないって分かってるんだ。愛はいつだって一方通行なのさ。もういい、もういいんだ。

でも、でも……。


こんな切なさは久しぶりです。






7月15日

長生きしてやる。

ギネスブックに載るくらい長生きしてやるんだ。

そんで言うのだ。「長生きの秘訣は?」と聞かれたら言うのだ。

「不規則な生活です」と。

世界に不規則ブームを巻き起こすのだ。

朝起きて夜寝るのはもう飽きた。






7月16日

日常のひとコマ。



地下鉄にて。

スーツをぱりっと着込み、ばっちしメイクした日本人のお姉さんがいた。装いは気合が入っているのにえらい疲れた風情で座席に沈み込んでいた。

やがておもむろにかばんから派手なムックを取り出し、虚ろな目つきで眺め始めた。

タイトルは「愛情のこもったお弁当」。

こんなん作ってくれる人いないかな〜と夢見てる方に一票。



ブックオフにて。

最近すっかりはまっているドカベンを立ち読みしていたところ、店内放送が。

「本日、日本からたくさんの商品が入荷しました。段ボール箱にして300箱です。どんどん棚に並べていきますので是非ご覧ください」

300箱積んであるところ、すごい見たい。



えらいだらけた金曜日だった。というかここんとこテンションが低い。たまには狂喜乱舞したい。うきー。






7月17日

前半戦が終わって、序盤の負け方を思えばぼちぼちなところにいるベガルタ仙台。試合の見れない環境にあるので、基本的に何も分かってません。速報や翌日の記事をみて想像するのがせいぜいな上に、自身にサッカー経験がないのでその想像力も非常に乏しいときています。

しかしながら。

これだけは言いたい。まだ幾分疑心暗鬼なのだが、これだけは言っておきたいのだ。

2004年後期用のポスターが出来あがり、ベガルタショップでいくらかお買い物をするともらえるんだそうです。それがどうもですね。これらしんですよ。







勝つ気があるのかベガルタ。



「行くぞ!! J1」とか言ってるが、まじでスタジアムに行くのも危うそうだ。

コンビニから出てくるおじさんがズデンコ監督に見えるのだが、まさか「ねぇ。スタジアムに連れてって」というのは彼の発言なのか。

左のお姉ちゃんの頭にある「!」というのは、監督のあまりな一言に「! それやばいだろ!」って耳を疑っているところなんじゃないか。

ああ、暗雲が立ち込めてきた。類稀な脱力感。

僕やっぱこのチーム大好きだ。






7月19日

ワンおぶザびっげすとナヤミーズ。

何が悩みかって、まあ聞いてくださいよ。

最近、大学でサマーコースを一つ教えているんですが、そこでとても困った事態に陥ったんですよ。ほんとあの時はどうなることかと思いました。

本職と授業と趣味の娯楽とあとデートとか丑の刻参りとか全部やろうとするとなかなか忙しいんですが、真面目に取り組んでる甲斐あって授業自体はつつがなく進んでいます。

そんで、今日中間試験をやったんですよ。試験っていうのは、受けさせる側はらくちんぽくちんじゃないですか。まあ、問題さえ作ってしまえば、当日なんてすることないし。おまけに採点はTAにやってもらうことにしたので、やりっぱなしですよやりっぱなし。まるで悪い男にでもなった気分で金土日月と四連休気分を満喫です。

教室に行って試験問題を配り、さあ、スタート。微妙に緊張感があって、悪くない雰囲気です。みんなちゃんとできるといいな。サービス問題はちゃんと先に解いとけよ。うん、いいぞ、どうやらしょっぱなからスタックしている人はいないようだ。

まあとにかくがんばりたまえ諸君。僕はここでふんぞり返って君らの勝負を拝見させてもらおう。なに、質問? 苦しゅうない、言ってみたまえ。――うーん、それは試験の一部だよ、せいぜいきばって考えてみそ。もっとも靴の裏でも舐めるというなら答えてやらんでもないぞわはははは。

などと偉そうにしているうちに15分が経過。ふと、脳髄を刺激する微妙な違和感が。



トイレに行きたい……。



試験は90分。あと75分。一時間と十五分。試験監督は一人。


えっと。

トイレに行きたいな……。


いまはまださほどのことはないとはいえ、一時間もすれば緊急事態になりかねない。

みんな真面目に試験問題に取り組んでいる――ように見える。

しかし、だ。

わざわざ夏のコースを取っているくらいだから、それなりの事情を持っている人が多いのだ。これは遊びではないのだ。とにかく単位は絶対に取らねばならぬのだ。もちろん出来るかぎりよい成績で。

特に、過去同じような授業を落としたがために、取り直しに来ている学生は要注意だ。彼らには後があんまりない。

20人近くいれば、モラルのない学生もいるかもしれない。モラルがあっても、いざ切羽詰ったときに誘惑に勝てない学生もいるかもしれない。一人でも何らかのルール違反を犯す学生が出れば、大きなトラブルに発展する。


トイレに行く訳にはいかない。下手をすればそれこそ緊急事態だ。


30分経過。


しかし何でこの部屋はこんなに冷えているのだろう。なんか向こうの方に調節器らしきものが見えるのだが、あれで緩められるのだろうか。ああしかし、立ち上がって体を動かすのはなんだか危険な気がする。

いかんいかん。気をそらせよう。そうだ、次の宿題の問題でも作っておくか。綺麗に割り切れるような数字を見つけるのはパズルみたいなもんだから、暇つぶしにはもってこいだ。


45分経過。


ああ、出来杉君が欲しい。ああいう良識を持ってクラス全体を統括できるような学級委員は、教師がテスト中にトイレに行くために存在するんだな。悟ったよ、僕は今、大きな事実を悟ったよ。


60分経過。


おいおい何だ貴様ら手を休めるな。さっさと終わらせるんだ。終わらせて、とっとと教室を立ち去るんだ。そそそそんなに難しい問題か。聞け、答えを聞いてくれ。いまなら答えるぞ。僕は全部黒板に書くぞ。みんなそれを写せ。みんな満点だ。ハッピーじゃないか。それで足りないなら靴の裏でもなんでも舐めてやるぞ。いや、舐めさせてくださいお願いだから。そんで僕をトイレに行かせてください。


70分経過。


何? トイレに行きたい? いいなおまえらは気楽で。


75分経過。


くぅぅぅぅ。あ、余らせた時間に応じて点数加算するとか言ったらみんなすぐ帰るかな……。


80分経過。


な、なにかがそこまで……。


85分経過。


もうすぐだ。だが油断するな僕。最後の一歩はいつだって一番辛いんだ。ここで折れてはいけない。小さい頃から、おまえは詰めが甘いと言われ続けてきたではないか。いまこそその詰めをしっかりと全うするときだ。根性が試されるときだ。


87分経過。


ああ、網膜の陰で桃太郎が雉とタンゴを踊っているよママ……。


90分――


終わりだー!! ほら、そこ、やめ、だめ、おわりっ、ちゃっ、だっ、とっ、四の五の言わずに提出しろーーーー!!


ああ……


し……死ぬかと、思った……。


ねぇ、試験中にトイレに行きたくなったらどうすればいいんですか? ワンおぶザびっげすとナヤミーズ。






7月20日

迫力のストーリーテリング。

「と、そのとき大地を引き裂く轟音がマッハの速度で迫り来た!
「うん、まあ音だし」








えーと、こんな感じ?






7月25日

こないだの夜、うちに帰ってきたら、なんとも違和感のある光景に出会いました。いや、最初はなんだか分からなかったんです。なんか変だという感じだけがあって、電灯のスイッチに手をやったまま、リビングの入り口で凍りついたように立ち止まっていました。

うちのリビングはだいたい10畳くらいのスペースなんですが、真ん中にテーブル、奥に棚が一つあるくらいで、基本的に殺風景です。ちなみに棚の一番上はベンジャミンの定位置ですが、それはどうでもいいです。

その殺風景なはずの部屋に朝にはなかったはずの賑わいがある。そっと花を添えたような賑わいがある。何かが増えている。でもなんだか分からない。そんな違和感。気分は「11人いる!」です。仕方ないので一つ一つ目で追っていきました。

えーと、片隅に電話があって、テーブルだろ? そんで椅子。うん、棚は変わらないな。で、えーと、そんでこっちに……こっち……







人間、意表を突かれるとなかなか理解できないものです。信じたくない気持ちが先に立つんでしょうか、それは非常に大きな物体であるにも関わらず、認識も出来なければ目に留まった後もしばし理解できませんでした。



あ、Pさんが寝てたとかじゃないですよ?



リビングの一方の壁際に鎮座していた、それは、




洗面台。




台の下の収納スペースも蛇口部分も全部セットになって。

普段バスルームにある状態をただそのままずらしてきた風情で。

あたかもそこで顔を洗うのが最近の流行だといわんばかりに。

いや驚いた。

テレビと洗面台が一緒のスペースにあるのはバストイレ共用の安ホテルだけかと思っていたのだが、事情は変わりつつあるらしい。

今日からは歯磨きしながらテレビが見れるな。


住み慣れた当たり前の空間に突然訪れたサプライズ。

笑った。涙が出るほど笑った。そんでちょっと感動した。生活の中の楽しみって、こういうところにあるんだと思う。真夏に雪がちらついたような、ささやかで無害な意外性。リビングに鎮座する洗面台。思わず蛇口をひねって水が出るかどうか確かめたとき、僕の顔は最高ににやついていたはず。


状況はすぐに想像付きました。前にも二回、パイプが水漏れを起こして工事に来たことがあったんですよ。そのときは割りとあっさりと終わってたんですが、多分それを大々的にやらないといけなくなったんでしょう。

バスルームを覗き込むと、案の定そこにはボッカリと大きな穴が開いていまして、複数のパイプが取り外されたままになっていました。明らかに工事中。夜になって中断したけど、全てが中途半端。それはまるで手詰まりの水道管ゲームの貫禄。

そして事情を説明するアパート管理人のメモがかたわらに。

うん、分かったよ、勿論文句なんか言わないよ。むしろ楽しませてもらって感謝したいくらいだ。築70年を超えたアパートだもの、あちこちガタが来るのは当然さ。なんだったら洗面台はあのまんまでも構わないよ、インテリアとしてはかなりお気に入りだから。

管理人のメモに笑顔で応える素敵なボク。



ただねぇ。




三日もお風呂に入れないのはどうかと思ったよ。






7月27日







7月29日

気がつくと7月も終わりが近く、どこもかしこも夏休み。散歩がてらにミッドタウンをぶらついていると、日本人観光客がぐっと増えたことを実感できます。

みんな楽しそうというか何というか。

こちらの日常とあちらの非日常が同じ舞台で展開しているのは少々悔しいものです。

僕も何かしたい。

出来ればしばらく旅に出たいんですが、どうもタイミング的に無理そうです。

しかし最近の授業中心の生活は結構ストレスがあって疲れます。何かしないことには精神衛生上よろしくありません。


と、いうわけで。


来週、授業が全部終了したら、解放的な気分を思いっきりぶちあげて、


ビッグ・アップル一周オフ(徒歩)を開催します。





この地図のやる気のなさ加減はこの際関係ない。


思えば僕はいつも歩いていた。別に登山をするとかハイキングに行くとかそういうんではなくて、日常生活の中でやたらめったら歩いてきた気がする。

これといって何をしているつもりもないのに、無造作にポケットに入れていたポケットピカチュウが3ヶ月で「祝 100万歩達成!」なるメッセージとともにうんともすんともいわなくなったのは悲しい記憶だ。しかもその頃は自転車通学をしていて、学校の往き帰りでは数歩分しか反応していなかった。いったい僕は大学構内をどれだけ練り歩いていたのだろうか。

仙台在住時は、どこに行くにも30分はかかるところに住んでいた。多分毎日二時間は歩き回っていたと思う。別段、電車やバスに乗るのが嫌いなわけではない。ただ歩いているのが好きなのだ。歩きながらつらつら考え事をするのが好きで、街角に眠る些細な発見が好きで、見知らぬ街で迷子になったままさまよい続けるのが好きなのだ。

スポーツをあまり好まない僕にとって、歩くことがほとんど全ての運動源であることに間違いはない。なにより運動神経が要らない辺りが素晴らしい。


さて、距離はどのくらいあるのでしょうか。たまたま机の上にあったイヤホンのコードを地図になぞらせて測ってみました。

マンハッタン島、外周およそ47キロ。

かなり手頃です。というかこんなに手頃な距離だとは思いませんでした。やっぱり小さい島ですね。うちからマンハッタンまでを入れると、全行程は50キロちょっとというところだと思います。日が暮れてから変なところを歩かざるを得なくなる事態を恐れていたんですが、これなら心配ありません。朝出て、どっかでお昼休憩して、夕方帰ってくる感じでしょうか。途中休んでも10時間はかからないんじゃないかな。

決行は、天候にもよりますが、来週の金曜日か土曜日か日曜日。

ルートはその時の気分で決りますが、出来るだけ岸辺を歩くつもりです。

参加希望者は――

――いや、いい、分かってる。最初から一人でやるつもりです。一回「オフ」とか言ってみたかっただけだって。

でもまあ、酔狂な方がいらっしゃったら一緒に歩きましょうか。おやつは3ドルまでね(バナナは含みません)。






7月31日

なんでマンハッタンをビッグアップルっていうの? という質問が来たので、お答えしようと思います。

このニックネームの由来については諸説ありまして、ジャズバンドがどうしただの、りんごみたいに中身ぎっしりだの、聞く人によってまちまちなのが現状ですが、みんな大事なことを見失っているのです。ここは万能Chujuがそれら俗説をばっさり斬って差し上げましょう。

ビッグアップルという名称、その由来はすばり形です。



これが現在のマンハッタン。東にイースト・リバー、西にハドソン・リバーが流れています。ところで、ハドソン・リバーは川だけど、イースト・リバーは海だって知っていましたか? イーストリバーは、ロングアイランドとマンハッタンの間の海峡なんです。ちなみにハドソン・リバーが凍ってもイーストリバーは凍りません。

この二つの川が曲者でしてね。流れとともに侵食していくんですよ、この脆弱なマンハッタンの陸地を。

では、時代をさかのぼってみましょう。




一万年前。ちょっとふくよかだったんですね。


更に時代は昇ります。






分かりました?




色を塗ってみました。




というわけだったんですね。これからビッグアップルの名前の由来を聞かれたら堂々と答えられるね☆









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